顧客管理、または顧客関係管理という言葉をご存知でしょうか。顧客管理とは一般的に『顧客情報と顧客ごとの売り上げや購入頻度などのデータを統合的に管理すること』を指します。簡単に言うと顧客個人のデータの管理ですね。
そして近年特に浸透しているのが、そのデータの管理を顧客との関係を向上させるために使おうという考え方です。ビジネス用語ではCRM(Customer Relationship Management:顧客管理・顧客関係管理)とも呼ばれています。
オンラインレッスンにおいても、受講者一人ひとりのデータを管理することで講師・レッスンとの関係を向上させていきましょう。データはただ取るだけではなく活用しなければ意味がありません。リピーター獲得に向けて顧客データを管理し活用していきましょう。
1 顧客管理システム導入のメリット
顧客管理を行うのであれば、システムやツールの導入は必須です。今は無料のツールもたくさん出ていますし、オンラインレッスンの予約や決済ができるプラットフォーム・システムを使って管理できることも多いです。多少費用がかかる場合でもメリットの大きさを考えると費用対効果は高いのではないでしょうか。
1-1 顧客管理が必要になった背景
そもそも顧客管理という考え方は、その昔はなかったものです。大衆に大量に同じものを売る時代では顧客一人ひとりに合ったサービスを提供するというところまで手が回っていませんでした。しかしIT化が進み、顧客が自発的に情報を集めて他と比較検討できるようになった現代では、サービスそのものの中身だけでなくその人に合っているかどうかによって売り上げが左右されるようになってきました。それと同時に顧客のニーズや行動、属性などをデータ化しておけるようになり、顧客管理という考え方が定着していきます。
オンラインレッスンもIT化が進んだ結果の産物ですから、受講者はたくさんのレッスンを比較しどの講座を受講するのか検討します。そんな中で自身のオンラインレッスンのホームページを訪れ、一度受講してもらえたのであれば、そのデータをしっかり活用して次に繋げていきましょう。
1-2 顧客管理のメリット
顧客管理による最大のメリットはリピーターが増えることです。オンラインレッスンでは、1度の受講だけでなく何度も受講してもらうことやサブスク方式を利用してもらうことを望んでいる講師がほとんどでしょう。
金銭的報酬が増えることもありますが、やりがいやモチベーションに繋がることが大きいですね。リピーターが増え、新規受講者も引き続き得ているのであればオンラインレッスンはどんどん大きく規模を広げていけます。また、同じ受講者数であっても新規だけよりかはリピーターが多い方がやりやすく、効率的に続けていきやすいというメリットもありますね。
1-3 エクセルを使った顧客管理
顧客管理システムを導入せず、『エクセルで管理しているから大丈夫』と思う方もいるかもしれません。エクセルは使ったことのある人の多いツールですからスムーズに導入しやすいですし、無料テンプレートなどもインターネット上に公開されておりうまく使えば顧客管理を行うことも可能ではあります。
しかし、予約した時の顧客情報をいちいち手入力するのは手間ですよね。人的なミスも考えられます。オンラインレッスンが単発1つだけであれば管理しやすいかもしれませんが、いくつかのコースをサブスク方式で管理していくのであれば、人力での管理は非現実的と言えるでしょう。
2 大手オンラインレッスンの事例に学ぶ
大手企業のオンラインレッスンでは実際に顧客管理システムを導入しているのでしょうか。オンライン英会話の事例を見てみましょう。
2-1 リピート率第1位『イーオン・オンライン英会話』
Webコンテンツ『ウーマンリサーチ』が2020年8月に実施した、『オンライン英会話についてのアンケート』を参照します。大手オンライン英会話18社のうちどれかを利用したことのある、全国の女性1,311人に聞いたアンケートです。
(参考;https://enfant.living.jp/mama/woman_research/810834/)
“女性が選ぶオンライン英会話ランキング、リピート率第1位は「イーオン・オンラインレッスン」、第2位は「DMM英会話」、第3位は「レアジョブ英会話」 となりました。“
リピート率の他に、利用率・総合満足度・価格満足度のランキングがありますが、どれも違う順位になっています。非常に興味深いですよね。総合満足度が最も高くても、リピート率が1位とは限らないのです。逆に言えば、価格が満足いかなくともリピート率を上げることは可能というデータにもなっています。
そんなリピート率第1位のイーオン・オンライン英会話ですが、サービスを提供している株式会社イーオンは顧客管理システムを導入しているようです。
2-2 株式会社イーオンはCRMシステムを導入
株式会社日立ソリューションズのCRMシステム構築サービス導入事例によると、株式会社イーオンはCRMシステム(=顧客管理システム)を導入し、生徒の満足度向上や業務効率化を行っています。
(参考;https://www.hitachi-solutions.co.jp/dynamicscrm/case06/)
“導入後 データとシステムが一元化され、一貫したきめ細かい生徒管理を継続できるようになった。統合されたシステムで、一貫した生徒様対応を継続し、さらに、生徒様の学習の進捗管理や、きめ細かい上達指導により、生徒様の満足度を高める必要がありました。生徒様がどれだけ学習して、どういう結果が出ているかを可視化し、たとえば、『TOEICの点数を100点上げるための学習時間、レッスンはこれが必要』というさらにきめ細かい指導に活用していきたいと考えています。これにより、生徒様のさらなる満足度向上に寄与したいと思います。“
大手のオンライン英会話レッスンとなると、管理しなければならないデータが膨大になるため、システム導入による一元管理は非常に重要でしょう。
個人が運営するオンラインレッスンとは規模も費用も違いますが、求めることは同じです。きめ細かい管理を継続することや、学習進捗管理・上達指導によって満足度を高めることなど、オンラインレッスンの講師も顧客管理システムによって同様の成果を目指しています。
このように、大手オンライン英会話企業も顧客管理システムを導入し顧客満足度向上・業務効率化を図っています。
3 オンラインレッスンで必要な顧客管理機能
オンラインレッスンを行う上で必要となる顧客管理機能は、大きく分けて2つあります。1つは記録すること、もう1つはアプローチすることです。それぞれ詳しくみていきましょう。
3-1 顧客カルテを作成・記録する
顧客管理と聞いてイメージするのはこちらの機能だと思います。オンラインレッスンに予約をした受講者ごとにカルテを作成し、記録しておきます。カルテはなるべく項目立てて整理できると見やすくなりますね。予約時に入力してもらう名前や連絡先などをはじめ、属性、いつ受講したか、何度受講したか、コースはどれか、などを記録していきます。
その他の情報はメモとして細かく記録していきましょう。同じパターンの人が多い内容については、タグ付けをして管理するとわかりやすいです。『初心者』『経験者』などをタグでつけておければ、ある講座の予約が揃った段階で初心者の割合がどの程度なのかパッと見てわかるので便利です。経験者が多い場合にはいつもよりレベルアップした課題を用意するなどの準備も行えます。
また、画像を添付しておくことも重要です。例えば絵画教室で毎回少しずつ油絵を仕上げていくのであれば途中経過を貼っておけると、次回受講時にどこからスタートするのかがわかって便利です。ダンスの立ち位置などの文字情報では表しにくいことも図を貼っておけると簡単ですよね。
3-2 一括メッセージでアプローチする
顧客管理機能で見落としがちなのが、受講者に一括でメッセージを送れる機能です。予約したオンラインレッスンの受講日前にリマインドを送るということは多くの講師が行っていることだと思います。しかし一括メッセージはもっと多くのタイミングで活用し、リピーター育成に繋げていくことができます。
例えば、受講から一定期間経っているのに次回予約がない方に対して再予約を促すメッセージを送りましょう。久々の参加でも入りやすいようなレッスンが用意できると良いですね。
また、新しいコースやサービスを始めた際にはその告知・連絡もしていきます。既にコアなリピーターであっても、自分が普段受けているレッスン以外のコースはあまりチェックしないものです。少し切り口を変えた講座を用意したときなどは、新規・リピーターに関わらず全員に告知し検討機会を増やすと良いでしょう。
人気のレッスンであれば、急なキャンセルや空きが出た際に一括メッセージで受講者を募集するという方法もあります。SNSなどで流す前に受講者リストの方から優先して告知することでお得感を出すこともできますね。
その他、お誕生日メッセージや10回受講した方へのお礼メッセージなどにも活用しましょう。合わせて割引や特典が案内できると更にリピーター増加へ繋がります。
4 失敗しない顧客管理のために
便利な顧客管理機能ですが、うまく使いこなせず失敗してしまう人も少なくありません。失敗事例を見てみましょう。
4-1 理解に時間のかかる記録
タグやメモの内容がわかりにくく、自分で後から見返しても理解に時間がかかる事例です。
タグは一目で判断できるように簡素化しようとするあまり、○×や123などで記号化してしまい何を指していたのかわからなくなってしまうことがあります。もしくは『再来』とだけ記してどのコースの何度目かなどの詳細を記載しておらず、活用するには情報が乏しく意味がなくなってしまうこともあります。
メモも同様に短くまとめすぎて何のことだか忘れてしまったり、長すぎてチェックを怠るようになってしまっては本末転倒です。効率的かつわかりやすい顧客管理の形を見つけて行けるよう試行錯誤しましょう。
4-2 情報が更新されていない記録
情報を常に新しく更新していくのは顧客管理の重要な観点です。受講回数や目標達成度などはレッスン毎に更新されていなければ意味がないですよね。自動化できる部分はシステムで自動化し、手入力の情報もレッスン後には必ず更新するよう習慣付けましょう。
そして、顧客管理は永久に情報を残しておけるため、アクションのない受講者の情報が増えすぎてしまうことが多いです。体験だけ受講し、一度再来を促すメッセージを入れたけれど音沙汰がない受講者などですね。これらの情報を残しっぱなしにしておくことは可能ですが、その他のアクティブな受講者情報が見えにくくなってしまうことが難点です。数回再来メッセージを送って見込みがなければ消してしまうなどのルールを決め、定期的にデータの整理を行うことも重要ですよ。
4-3 多すぎるメッセージ送信
一括メッセージ機能をどのくらいの頻度で使うかは難しいところです。迷惑メールのように感じてしまい全く開かないという方もいるでしょうし、狙い通り『久しぶりに受けてみようかな』と受講の後押しになる方もいるでしょう。このあたりはうまく受講者とコミュニケーションを取りながら、自分のオンラインレッスンに合った頻度を見つけていけると良いですね。
基準としては、オンラインレッスンに対して何のアクションもしていない受講者に対しては2度3度までの連絡に留めておきましょう。アクションしている人と分けてメッセージを送れるようにするのも顧客管理の役割のひとつです。
そして受講してくれた方に対して再来やキャンペーンを促す場合には、次の日や次回予約の前日など、毎回決まったタイミングに決めてしまうと良いでしょう。受講者も通知を見て『きっとレッスンの連絡だな』とわかるとメッセージに対するストレスが軽減されます。
また、数字を見て判断するのも良いでしょう。メッセージの頻度を上げた際に受講者が増えれば問題ありませんし、何度も送っているにも関わらず思ったような成果が出ない場合には逆効果になっている可能性も考えましょう。
5 個別指導は顧客管理が重要
顧客管理は、人力で管理できないほど多くの受講者がいるレッスンでしか効力を発揮しないのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。顧客管理は、1レッスンにおける受講者の数が少なければ少ないほど効力を発揮します。その最たるものが個別指導やマンツーマンレッスンです。
個別指導は、受講者一人ひとりに合ったレッスンを講師が用意するものです。受講者もそれを求めて受講するでしょうし、講師もできる限り受講者に合わせた内容を考えたいと思っているでしょう。
しかし、講師にとっては個別指導を行う受講者は複数人いますから、話したことと感じた事を全て覚えているのは難しいですよね。各それぞれの性格や個性、前回やったことやできなかったこと、人生の目標や雑談など、覚えていた方が良い情報は膨大です。
こんな時に顧客管理システムにメモとしてしっかり残していると、レッスン前に受講者の細かい情報まで思い出せます。できればレッスンの準備段階で思い出しておき、その人に合ったレッスン内容を考えましょう。レッスンの内容にまで踏み込まなくても、BGMを好きだと言っていた音楽に変えるなどの些細な行動でも構いません。『この前仰ってた○○どうでしたか?』という雑談から始まるだけでも、『この講師はきちんと自分を見てくれているんだな』という信頼感に繋がり、リピーターを増やすことができます。
5-1 受講者自身と顧客情報を共有する
個別指導の中には、受講者と受講者自身の顧客情報を共有するレッスンもあります。もちろん、講師が他受講者とまとめて管理している顧客情報そのままではないですよ。メモの部分だけであったり、評価や記録の項目を設けてその部分だけ共有するという方法です。
パーソナルトレーナーとのマンツーマンレッスンのような体を動かす内容の場合、受講者自身はその場でメモを取ったり記録を残すことが難しかったりしますよね。あとで振り返りとして顧客情報を使いたいという受講者が多いようです。また、コースの最後に共有することで『こういう順序で成長し、最後にはできるようになりましたよ』という記録を渡すことができます。受講者は達成感を感じますし、それをひとつの記念として取っておきたいと思うかもしれませんね。
このように受講者にも共有するメモを用意するとなれば、顧客管理の枠を超えてそういったパーソナルカルテのサービスを提供していることになります。当然手間も時間もかかりますし、その分受講者にも費用を負担させることになるかもしれません。無理にサービスを増やすのではなく、リピーター増加のために施策を打つ場合には一つの選択肢として考えてみてください。
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